今年最初の魚住廣信先生から学ぶ定例勉強会。
今回のテーマは筋膜についてです。簡単に整理しました。


体は表層から、表皮、真皮、皮下脂肪、筋膜(浅筋膜、深筋膜)という順で構成されており、筋膜は筋肉を覆い全身に繋がっています。

そして、筋膜の繋がりの影響で筋肉は縦方向だけでなく、横方向にも繋がりを持ち、筋肉の出力に関係しているようです。

筋膜の状態が悪くなってしまうと、筋肉や結合組織との滑走がうまくいかず、動きの緊張に繋がることになります。まずは筋膜を柔らかく、動きやすい状態に保つことが大事です。

筋膜はコラーゲン線維、エラスチン線維、基質というもので構成されていますが、基質という水分を持つものが、滑走性を保つために重要な役割を担います。

そして、基質の役割が果たされるためには熱が必要になります。基本的に筋膜は冷えてはいけません。体を温かい状態に保つことで、筋膜の水分が保たれ、コラーゲン線維やエラスチン線維がスムーズに働く事になります。

今回は、筋膜の繋がりをイメージしたアプローチとトレーニング法を中心に学んでいきました。
筋膜に熱を持たせ、筋膜を緩めることで全身に影響を与える考え方。そして、筋膜を意識した関節運動を行うことで筋の弾力性を取り戻し、体がスムーズに動く考え方の実践です。

バランスを整える
一般的に体の前面の緊張を緩めるためには、ストレッチポール上に仰向けになったり、タオルを丸めたものを背中に当て、胸椎の伸展を引き出そうというアプローチが多いのではないでしょうか。これらは、体の一方向に対してアプローチを行うという考え方です。

例えば、タオルを巻いて厚みをつくって床に横に置き、タオル上に背中がくるように仰向けになります。そうすれば、胸椎は伸展されて、体の前面は伸ばされますが、逆の後面は緊張しているということが起きています。次は後面を伸ばしてバランスを整えようということになりますが、そういう一方向や部分的なアプローチでは、全身的に体を整えることは難しくなります。

目的は「姿勢を中間位に戻すこと」です。中間に戻すためには、体の一面や一部をターゲットにするのではなく、体の前面、後面を同時に緩める方がバランスが整うのではないかという考え方ができます。

フラットな床に仰臥位になり、肩の前後の筋バランスが整っている中間位で、腕を外転させます。中間位で動かすと肩の前面、後面がバランスよく動き、整っていきます。肩の外転を深くしていくと、当然肩甲帯も動くことになり、肩甲骨に関与する筋群にも刺激が与えられ、更に派生してバランスが整っていきます。

また、手の屈筋と伸筋支帯を緩め、そこから振動刺激を与えることで前腕から体幹部までの繋がりで緩めるアプローチも実践しました。
手の掌側と背側のバランスを調整すると、自然に腕、肩の位置が中間に戻っていきます。簡易に効率的に体のバランスを整えることができました。

腱鞘炎へのアプローチの考え方
ドケルバン、腱鞘炎についての質問がありました。腱鞘炎は要はオーバーユースですので、直接関連しているの腱や筋肉を緩めて状態を回復させる必要があります。しかし、局所的なアプローチではうまくいかないケースが出てきます。
手に問題があれば、当然前腕から体幹部に渡り、影響が出ているはずですので、全身的なつながりをイメージすることも大事です。
下肢の筋スリングと同じように、上肢の筋スリングに従い、手関節→肘関節→肩関節の順に動かすアプローチを実践しました。
動かすポイントは、筋肉の緊張を感じない方向に動かしていくというものです。筋膜をイメージしながら繰り返し関節を動かしていくと、筋肉の緩みを感じ、動きが変化していく事がわかります。
局所のアプローチをに加え、筋膜の繋がりをイメージしたアプローチと組み合わせると非常に効果的だと感じました。

体は連動して動く
体は本来一部の関節だけ動くということはなく、全身が連動して動きます。例えば力が抜けていると、頭部を少し屈曲させるだけで、胸椎、腰椎が屈曲し、骨盤が後方へ動いて股関節、膝関節が屈曲します。この一連の動きは動かすものではなく、勝手に動くということです。

頭部が前方へ移動すれば、バランスを保つ為に脊柱は後湾します。バランスがとれてリラックスしていれば、全身の緊張は一定になり、局所的なストレスは感じません。
体に緊張があると、このような連動性がうまくいかず、ストレスがかかる部分が出てきます。
例えば、背筋を伸ばした状態で頭部を屈曲しているようなと場面です。頭部の重みは、脊柱のアーチが作られないことで力が分散されず、首の付け根に集中します。そうなると局所的な問題が起きやすくなります。要は協動した動きができなくなり、筋の緊張が起きやすくなるということです。

全身の連動した動きを脳に教育していくと、動きに緊張感が見えなくなります。そのような適切な動作を繰り返し行うことで、筋肉は弾力性が回復し、緊張が緩みます。

これは一種のトレーニングのであり、全身を整えるアプローチになります。このような、体の連動性を教育する指導は必須であると感じました。

今回は筋膜に対しての様々な考え方を学びました。
他にも、四肢の振動刺激、筋膜をイメージし下肢の運動、上部頚椎の調整などの紹介がありました。
体は繋がっていることを再認識することができ、有意義な時間となりました。


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