今回は「バランストレーニング」について考えていきたいと思います。

バランストレーニングといえばどういうものをイメージするでしょうか。
一般的には不安定な状態を作り、そこでバランスを安定させようとするようなエクササイズが多いと思います。

よく見かけるのは、バランスディスクやボールの上に乗ってグラグラしながら何かの動作をするようなもの。
最近では水が入ったバックをもってスクワットをしたり、歩いたり、捻ったりというものもあります。

それらの目的はなにかというと、バランス能力を高め、体幹を安定させるということのようです。
しかし、本当に体幹が安定し、バランス能力は高まるのでしょうか。

まず、バランス能力というのはどういうものかを考えないといけません。
本来、バランス能力というものは、バランスが崩れたときに元の状態に戻す能力の事を指します。


不安定なところでバランスを良くするということではありません。

スポーツでもそうですが、不安定な所で何かをするという場面はほとんどないと思います。

バランスボールの上に乗り、アンバランスな状態を作り出すのではなく、スポーツや日常生活でバランスが崩れたときに元に戻せる力を養うことです。


そう考えると不安定な状態を作り出す必要があるのかという疑問が出てきます。

不安定なディスクの上に乗る練習をするとどういう能力が高まるかというと、バランスディスクに乗るという能力が高まる。ということになります。

ですのでバランス能力が高まったり、歩行の安定が良くなったり、脚が速くなったりすることは基本的にはありません。

これはトレーニングの原則である特異性の原則に当てはまるからです。

その様なトレーニングではなく、まず安定性として大切なのことは、両脚でしっかり立つことではないでしょうか。

二本足で体重を支持して立つ。そこから重心を移動して歩き、走ることで体幹は自然に安定するのでないかと思います。

例えばランニング障害は、体幹や下肢の筋肉が弱いのではなく、走り方に問題があることがほとんどです。

走り方に問題があるということは、体に捻じれがあったり、左右傾いて走っていたり、靴の減り方に差があったり、要は体が崩れているケースがでてきます。

そうなれば、両脚の足裏に適切に体重を支持できない、もちろん片脚でも支持できないわけですから、体が安定するわけありません。

ですので、体幹の強化するということよりも体を自然な状態に修正し、足裏に適切に体重を支持して走ることで体幹は安定し、障害は起きにくくなり、体幹も自然に強化されると考えられます。

また、スポーツではスキルの練習の中でもバランスは高まり体幹は強化されます。

例えばサッカーではディフェンスとオフェンスがあり、ボールを取るため、相手を抜くために相手のバランスを崩しにかかります。

様々な予測できない動きのなかで常にバランスを修正し、相手に反応、マークしなければいけません。

また、相手にコンタクトして体を当てていく事で、自然にサッカーの体幹の強さが作られます。

僕は体はまぁまぁ大きいですが、サッカーでは僕より小さい人に当たり負けします。それは体を当てるスキルが高く体幹が安定していると考えられます。

ということは、サッカーをすることでバランス能力も体幹の力も高まります。その方が断然適当ではないでしょうか。


一般の方でもまずは自然に立てない、歩けていないことが多くあります。

そこを修正してから、歩く、昇る、降りる、しゃがむ立つ、走るなどの動作を練習し、そこから足りなければ強化していく方向に考えればいいのではないでしょうか。

ここまで、バランストレーニングについて書いていきましたが、いずれにしても最初にトレーニングの目的が大切です。どんな体幹が必要なのか、どのようなバランス能力が必要なのか、目的を明確にし、トレーニングの方法を選択していく事です。


ですので、体のバランスが悪いからといってアンバランスな状態の中でエクササイズを行うことが適切かどうかは、考えるが必要があるのではないかと考えています。

私のトレーニング指導では、体が不安定な人や問題があるケースでは、まずは自然に二本脚で立ち、そこから適切なスムーズな動きができるように誘導していきます。

そうすると体は自然に安定していきます。

体を自然な状態に修正すること、そして基本的な動きを理解することが大切であると改めて感じています。

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